12月第2週の振り返り

12月第2週(12/9-12/15)

フランス法文献講読

préjudice(損害)とdommage(侵害された事実)は異なる概念であるとアンセル教授は述べる。日本法においては特異な相続肯定説がとられており、死亡によって生じた損害賠償請求権(逸失利益)が被害者本人から相続人に相続されるとするが、フランスを含め他国では基本的に本人は死亡しているので損害賠償請求権が発生するのではなく、扶養利益の損害賠償を各人が請求することになっている。

人的担保

保証債務の成立には主債務の成立と保証契約の締結が必要となる。保証契約は要式契約であり、書面が必要である。保証契約の当事者は債権者と保証人であり、主債務者が保証人と保証委託契約を結ぶことは必須でない。保証契約について動機の錯誤(担保があると聞いていたのになかった、そんなリスクがあるならば保証人にならなかった)による無効を主張できるのに加え、改正により主債務者が保証を依頼する際保証人に財産状況等を提供する義務に違反し、また保証人を誤認させるに至った因果関係があるとき、債権者(債権者も調査結果の説明義務を負う)が主債務者の債務や財産状況について悪意または有過失であったならば、保証契約取り消しの効果が生じるようになった。

保証債務は主債務よりも重くなることはなく、その場合は縮減される。また保証契約締結後に主債務が増えても自動的に保証債務が重くなることはない。

主債務に生じた事由は保証債務にも影響する(主債務の時効の更新・完成猶予が保証債務にも及ぶ。逆に保証人が主債務の時効の援用をすることもできる)。保証人について生じた事由は相対効であり、主債務者に影響を与えない(弁済を除く)。そのため保証人に催告・訴訟提起をしても主債務の時効には影響がない。

保証債務には補充性があり、保証人は催告・検索の抗弁を行うことができる(連帯保証では否定される)。

保証人は主債務者が利益を受けた限度において主債務者への求償権を有する。ただし委託保証人が事前・事後の通知義務を懈怠した場合は求償が制限され、それぞれ抗弁を有していた分の求償不可、債務者への一切の求償不可となり、債権者に不当利得の返還請求を行うことになる。

個人根保証は保証人の保護のため極度額を定めずに契約したものは改正後無効となった。

三者が債務を消滅させようとする場合、複数の方法がある。

(債権者と保証契約を締結し)無委託保証を行い弁済するならば、現存利益の範囲で求償することができる。

債務を引き受けるには、併存的債務引受:引受人との間に新しい債務を設定する(原債務者との間に連帯債務関係が成立する)ものと、免責的債務引受:債務者の地位が引受人に移転する(原債務者は債務を免れる)ものの2種類がある。

前者は連帯債務関係であるから(引受人の負担部分を超えた範囲で)求償権が発生し、また債務者による契約取消・解除権の行使前の債務履行を引受人は拒絶できる。また債務者-引受人間の合意により行った債務引受は、合意が強迫によるものだったなど引受契約の無効・取消事由をもって債権者に対抗できる。債権者-引受人間の契約による場合、債務者-引受人間の原因関係から生じる事由をもって債権者に対抗することはできない(契約の条件とされている原因関係は例外)。

付従性や補充性がないことの違いはあるが、債務負担の合意がなされている場合に保証との区別が困難である。そのため保証目的の引き受けであるならば保証に求められる規定の潜脱を防ぐような処理が求められる。

後者は債務者が移転し、加えて債務の元となった契約の取消・解除権も移転する。求償することはできない。

債務の更改は免責的債務引受に似るが、更改契約という1つの法律行為によって旧債務の消滅と新債務の成立が実現する。新債務は旧債務と同一ではなく、担保は当然に移転することはない(ただし更改契約に特約があれば質権・抵当権に限り認められる。人的担保は責任消滅)。

三者弁済は債権者との契約なく弁済するもので(とはいえ債務者との委任契約に基づく事務処理費用償還:650条または事務管理に基づく費用償還:702条の形で求償権は発生する)、担保不動産の第三取得者のように債務が履行されないと自分が(法律上の不利益を受けて)困るという者=正当な利益を有する第三者は無条件で認められる。そうでない場合、例えば債務者の家族を脅して弁済させることを防ぐために、債務者の意思に反して弁済することはできない。ただし債権者がそのことについて善意であれば有効である。こうした不安定さを考慮して、改正により債権者は拒絶することができるようになった。

並列プログラミング

 Ax=bとなるxを求めるには行列操作によって厳密解を求める直接解法と、近似解を反復的に計算することで収束させ求める反復解法がある。

直接解法としてGauss-Jordan法がよく知られている。係数を一つずつ消去したのち残った a^{*}_{ii}x_{i}=b^{*}_{i} a_{ii}で割って x_{i}を求めることになる。

これを多少高速化したものが手で計算する場合によく使われるGaussの消去法(掃き出し法)で、対角成分だけを残すように引き算を繰り返すのではなく、上三角行列になるようにする(これにより係数消去時の計算回数が減る)。最後の項 a^{*}_{nn}x_{n}=b^{*}_{n}から順番にxを求める。

LU分解法は行列演算として定式化したもので、A=LUに分解し、 Ax=b\\(LU)x=b\\L(Ux)=bここで Ux=cとおき Lc=bで上から順にcを求める。そして Ux=cより最下段から順にxが求まる。

異なるb'が与えられたとき、LUは既に分解されているのでLc'=b'となるc'を求め、Ux'=c'となるx'を求める。このようにLUは最初に一度分解すれば使い回すことができるので高速化が図れる。

どのようにA=LUと分解するかについては、3種類の手法が知られている。外積形式Gauss法、内積形式Gauss法、Crout法がある。外積形式Gauss法(Doolittle法)が並列化に向く。これはGaussの消去法と同じやり方である。ただしLの対角成分は1と仮定しておく。すると \begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}&a_{13}\\a_{21} &a_{22}&a_{23}\\a_{31}&a_{32}&a_{33}\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1&0&0\\l_{21}&1&0\\l_{31}&l_{32}&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}u_{11}&u_{12}&u_{13}\\0&u_{22}&u_{23}\\0&0&u_{33}\end{pmatrix}から u_{11}=a_{11},\ \ u_{12}=a_{12},\ \ u_{13}=a_{13}、次いで a_{21}=l_{21}u_{11}より l_{21}=\frac{a_{21}}{u_{11}},\ \ l_{31}=\frac{a_{31}}{u_{11}}、今度は u_{22}=a_{22}-l_{21}u_{12},\ \ u_{23}=a_{23}-l_{21}u_{13}と交互にUとLを計算していく。

こうして得られていくLUを一つの二次元配列で以下のように記録する。 \begin{pmatrix}u_{11}&u_{12}&u_{13}\\l_{21} &u_{22}&u_{23}\\l_{31}&l_{32}&u_{33}\end{pmatrix}
Lの対角成分は1なので記録する必要はない。

法医学

異常環境による死ということで熱傷死・焼死・熱中症・凍死について。

第1度熱傷:日常的に生じうるやけど。毛細血管の拡張・充血による紅斑が生じる。

第2度熱傷:血漿が血管外に滲出し水疱が形成される。真皮深層に至ると治癒時に瘢痕を残す。

第3度熱傷:真皮を含む皮膚全層が熱によって凝固し壊死する。血管も熱凝固しているため水疱が生じない。2-3週で瘢痕を残して治癒する。

第4度熱傷:炭化であり、熱湯では生じない。

第1-2度熱傷は血流によって生じるため(死直後の心臓が動いている間はまだ生じうるが)生活反応として使うことができる。

第2度熱傷が体表の20%に及ぶと血圧が低下し熱傷性ショック状態となりうる。50%以上で死に至る。第3度では1/3以上で死亡する。致死的かどうかの判断は第3度熱傷面積パーセント+第2度熱傷面積パーセント*1/2+年齢というburn indexで計算することがある。

熱傷性ショックは循環血液量減少、熱傷組織から出た酸化脂肪酸のような熱傷毒、溶血、敗血症などの病態をとる。

面積の目安としては「9の法則」と言って頭部、各上肢、各大腿、各下腿が9%、背中前後それぞれ18%、掌で1%という概算ができる。

重度の熱傷を負うと皮膚が縮み、胸腹部であれば呼吸阻害、手腕部であれば血流減少による壊死が起こるため、皮膚を切り開いて防止する減張切開が行われる。

火事においては熱傷死だけでなく、有毒ガスの吸入や酸素欠乏による複合的な要因による焼死が生じうる。そのため前述の第1-2度熱傷気道熱傷や血中一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)といった生活反応によって判断する必要がある。

屈筋が熱凝固により強く収縮して拳闘家肢位と呼ばれる姿勢をとる。また皮膚が裂けたり腹腔内での水蒸気発生によって腸管脱出が生じることがある。皮膚の収縮によって行き場を失った血液の圧力で静脈洞が裂け、熱凝固した硬膜外にレンガ色・赤褐色(高熱による凝固の色)の血腫として付着する(外傷性血腫は黒色であり、しばしば骨折を伴う)。これらは生活反応ではない。

熱中症は体温調節中枢が働かなくなり臓器の機能不全に至るもの。

凍傷は-2℃以下で発生し、組織が凍結→融解→炎症と壊死という過程を経る。凍瘡(しもやけ)は低温刺激による血管拡張・鬱血であり、8-10℃で生じる。凍傷も第1度の紅斑性、第2度の水疱性、第3度の壊死性に分けられる。第2度までは瘢痕を残さず治癒する。

低体温症による凍死は水中なら15℃程度でも生じる。5℃では数時間で死亡する。直腸温30℃以下で危険になる。胃粘膜の点状出血(Wischnewski斑)や鮮紅色の死斑、右心室と比べ左心室の鮮紅色血液が認められる。

感電死は電流による心室細動、呼吸筋痙攣・呼吸中枢麻痺による窒息死、熱傷の合併症が原因となる。交流、特に40-150Hzが最も危険である。所見として熱傷と電流斑(黒凹-蒼白隆起-紅斑という特異なもの)があるが、水中の感電など面積が広い場合は発現しない。

メディアプログラミング

今週はテキスト分析。形態素解析janome言語モデルをnltkで演習する。連続する名詞など、複数の単語境界が考えられる場合の分割方法はいくつか考えられてきた。分割数が最小になるようにするもの、最長一致する単語を選択するものなどがあり、Viterbiアルゴリズムと呼ばれるものでは生起コストと連接コストの和が最小となるように単語分割を選択する(≒最も頻度の高い単語の連なりを選ぼうとする)。

janomeでの形態素解析は簡単で、

t = janome.tokenizer.Tokenizer()
t.tokenize(string)

だけで終わる。

言語モデルは入力された文の生起確率を返すモデルで、素朴なものとして統計的単語n-gramがある。n=2の場合ある単語に続いて当該単語が来る確率を学習コーパスを用いてあらかじめ計算しておき、入力文の評価は分割したのちにそれぞれの単語の組み合わせが生起する確率の総乗で算出する。

 nltkを用いて学習させ、特定の単語からなる文を生成させるには

from nltk.lm import Vocabulary
from nltk.lm.models import MLE
from nltk.util import ngrams

n = 3

vocab = Vocabulary(1d_vocab_list)

text_trigrams = [ngrams(word, n) for word in words]  # wordsは分かち書きによって得た単語リスト

lm = MLE(order = n, vocabulary = vocab)
lm.fit(text_trigrams)
context = ["親", "譲り"]
while(True):
    w = lm.generate(text_seed=context)
    context.append(w)

    if '。' == w:
        print("".join(context))
        break

とすれば得られる。