10月第5週・11月第1週の振り返り

10月第5週・11月第1週(10/28-11/3)

フランス法文献講読

教材の中から興味のあるトピックを選んで授業一回分の発表をするということで取り組み始めたところ、扱われている判決が(単独で)尋常でない分量であり、ここから要旨を読み取って補足とするには途方もない時間がかかると見込まれるので逡巡している。

債権総論

ある債権の弁済を担保するために別の債権を当該債権の債権者に譲渡することを債権譲渡担保という。

債権譲渡の目的物となる債権が譲渡時点で未発生の場合(将来債権譲渡、事業開始後に発生すると期待される債権を担保にして借り入れをする場合など)、譲渡契約の有効性において債権発生の可能性は問題にならない(譲渡人の責任を追及すれば足りる)というのが判例である。ただし譲渡する将来債権の期間が著しく長く取引の自由を拘束するなど公序良俗違反により無効となることはある。譲受人は未発生の債権について発生時点ではなく譲渡時点で対抗要件を具備することができる。

債権譲渡登記は通知または承諾なしに第三者対抗要件を具備することになるとはいえ、証明書交付と通知によって債務者対抗要件を具備しなければ拒絶されうる(債務不履行責任の追及や不当利得返還請求が可能)。

債権質は譲渡担保と異なり弁済期が到来してから取立権限が取得される上、その権限は被担保債権額までに限定される。

譲渡制限特約のついた債権を譲渡するにあたっては、譲渡制限特約が債権者の固定という債務者の利益を目的としたものであるから、債務者対抗要件を具備する前に特約が結ばれたならば譲受人に対抗できるとされる。

譲渡・質入制限特約がある場合、譲渡によって自らの債務を弁済することはできないが、代わりに取り立てを委任(代理受領)することによって似た効果を得ることができる。

債権の相殺の意思表示を行う(=自働債権となる)には自己の保有する債権が弁済期を迎えていなければならない。505条では双方の弁済期到来が条件とされているが、判例上は自働債権だけでよい。意思表示を行う側が負っている債務がまだ弁済を行わなくてよい(期限の利益)とはいえ、自らそれを放棄することは自由だからである。

この意思表示の時点で相殺適状である必要がある(消滅時効にかかっていた場合は時効完成前に相殺適状が生じていたことが必要だが、相殺は可能)。

この相殺期待の担保的機能は強力で、破産時にも財産分配に先んじて(保有債権の弁済期が来ていなくても)相殺してしまえる(正確には論理が逆で、相殺はそのような効果を持つので担保として強力であると考えられている)。

相互性を満たさない三角相殺は原則として認められない(最判平28・7・8民集70巻6号1611頁)。

並列プログラミング

ループアンローリングはループの中で複数回分の命令を冗長に記述してループの回数、ひいては終了条件チェックの回数を削減し、また複数回の命令の間で値キャッシュを活用することで性能を向上させている。

一方ブロック化はよりハードウェアに近づいた最適化手法で、プロセッサのL1キャッシュを最大限に活用することを目的とする。キャッシュは複数のキャッシュラインからなり、そのラインサイズは現時点で64バイト=double 8個分であり、それを超えて行方向アクセスをしてもキャッシュに存在せず(キャッシュミス)、メモリから逐次(キャッシュの内容を一要素ごとに入れ替えているため)読み出す必要がある。そこである程度のブロック幅を定めて、キャッシュに載る範囲で部分的に計算し、次のブロックに移動して足していくようにするとキャッシュミスの頻度が減り、ナイーブなコードの2-3倍程度速くなる。

IntelコンパイラではOpenMP pragmaを解釈させるオプションは-qopenmpで、gccの-fopenmpとオプション名が違う。Intelコンパイラに-O3 -xMIC-AVX512で最適化させて行列-行列積を計算させると、上記-O0でブロック化したものより数百倍速く、コンパイラの高度な自動最適化の恐ろしさを実感した。

法医学

司法解剖司法警察員が鑑定処分許可状を裁判所から得てから行うが、死因身元調査法による解剖では警察署長の判断でできるようになった。

死体現象(postmortem change)は時間経過による変化だけでなく、死の確実な根拠としての意義がある。腐敗現象が発現する前の早期死体現象と、その後の晩期死体現象、また異常環境下での異常死体現象に分けられる。

早期死体現象としては

  • 体温冷却

外気温に近づく。死直後から12時間まで急速に低下、発熱・興奮剤(上昇)や失血死(低下)により変動する。Henssgeノモグラムで直腸温と環境温と体重から死後経過時間が推定できる。

  • 血液就下

重力に従って血液が降り、毛細血管の圧迫により死斑が生じる(30分~2時間で発現し、その後動かされると時間に応じて消失再発現→両側性死斑→固定)。そのため圧迫部位には発現しない。重力と圧力によって位置が変わるために、体位や圧迫が推定できる。また発現度によって失血の有無がわかる。色調によって特定の化学物質中毒の推定が可能なこともある。窒息死の場合点状出血を伴う。

  • 乾燥

徐々に褐色で硬くなる(革皮様化)。指先、口唇など先端部に顕著。

  • 角膜混濁

乾燥による角膜たんぱく質の変性が原因で、虹彩・瞳孔が不明確になる。

  • 硬直

一度弛緩し、時間経過(2時間以降発現)でATP濃度減少により硬直、その後数日でアクトミオシン分解による緩解となる。8時間以上経過すると再硬直しなくなる。立毛筋もこの時硬直するため鳥肌になる。

晩期死体現象として

  • 自家融解

酵素によって細胞の自己消化・溶血などが生じる

  • 腐敗

10℃以下、38℃以上で抑制される。栄養状態や血液量に左右される(魚の血抜きはこれを利用する)空気の流通が少ない場所では遅くなる。色の変化は硫化ヘモグロビンによる。腐敗ガスにより体が膨張する。数日で緑変し一週間以後腐敗が進行する。

  • 動物による損壊

野外環境やペット・鼠の生息環境で生じることがある。またハエは死後昼間に迅速に産卵するとされる。

異常死体現象としてミイラ化(乾燥が腐敗よりも早く進行し細菌繁殖が停止)、死蝋化(高湿環境で数か月以降脂肪組織が浸潤)がある。

ネットワーク論

ポート番号によってどのサービス/アプリケーションに宛てたものかを識別する。www.abc.x-univ.ac.jpの場合、日本-大学組織-x大学-abc部署-ホスト名wwwという構造になっている。wwwはWWWサーバの識別子ではなく、自由に付けられるホスト名であることは認識していなかった。

このドメイン名に対応するIPアドレスを尋ねられたルートDNSサーバは、jpのDNSサーバを示して問い合わせるよう返答する。jp DNSサーバはac.jpの...とこれを繰り返す。

このような問い合わせ(DNSクエリ)にはA(ドメイン名に対応するIPアドレス)・PTR(IPアドレスに対応するドメイン名)・NS(望みのドメイン名について知っているDNSサーバ)・MX(ドメイン名に対応するメールサーバ)がある。

DNSサーバは通常、応答の高速化のためキャッシュを参照し、存在しなければ権威サーバに問い合わせる。この問い合わせに対する権威サーバの応答になりすまし、実在のドメイン名に不正なIPアドレスを対応させてキャッシュさせるのが従来のDNSキャッシュポイズニングであった。

存在しないドメイン名を問い合わせ、「そのドメイン名について参照すべき権威サーバ」を知らせる権威サーバの応答になりすまし、偽の権威サーバに誘導するのがKaminsky Attackという手法であり、毎回異なる(存在しない)ドメイン名を問い合わせられるためキャッシュが切れるのを待つ必要がなく従来よりも効果的な攻撃であるとされる。