10月第2週の振り返り

10月第2週(10/7-10/13)

フランス法文献講読

フランス債権法においてはobligationが債務を、obligationsが債権債務、l'obligationが債権債務関係(=le rapport d'obligation)を指すことが多いとのことで、解釈に当たってはわずかな表記の違いに気を配らなければならないことを理解した。またcôté actif/côté passifというのは法律関係の積極的側面(権利を有している、債権債務関係で言えば債権)・消極的側面(義務を負う、債務)のことを意味している。

loiは議会で審議し修正される法案であり、ordonnanceは行政である司法省によって起草され委任立法として議会は承認するか否かを決定する法である。ordonnanceはratifiée(追認)されなければならない。

債権総論

債務不履行に基づく損害賠償は、債務不履行と因果関係にある「通常損害」、また通常の因果関係にはないが特別な事情によって生じた特別損害のうち、その特別な事情を債務者が予見できた(と立証できる)場合にはその損害も賠償義務に含まれる。予見できたといえない場合には請求が認められないのは、その損害の原因が当該不履行以外にも無数に存在しうるため、債務不履行に基づく損害賠償が目的としている契約が意図していた利益状態の実現とはいえないことが理由である。

履行遅滞で賠償を請求できる損害には、例えば履行遅滞により転売利益が減少した場合の減少分と違約金、賃貸物件の引き渡し遅延により賃貸借契約の履行遅滞が生じて失った営業利益といったものがあげられる。

総じて債務不履行の損害賠償は履行利益賠償と呼ばれ、目的物の交換価値(当該目的物の現有価値など)、代替取引費用、喪失した転売利益と違約金、修補費用が含まれる。

目的物の市場価格が上下する場合、履行に代わる損害賠償は代金に加えて転売できなかったことによる逸失利益も含まれるとされていたが、価格高騰によって生じた逸失利益は当然には通常損害とはならず、騰貴の予見可能性が必要とされるようになる。(不履行から数年後に賠償請求を行ったとしても)履行不能当時の価格が原則である。しかしマイホームを名義移転前に他者に転売され、その後価格高騰したという事案(最判昭和47年4月20日)で、不履行がなければ買主は現に保有できていたはずだから、その損害は転売の意図がなくとも現有価値を基準として算定することとされた。これは動産ではない土地建物だからかもしれない。

逆に下落時においては、下落のリスクは不履行をした売主が負担すべきであるから、予見可能であったとしても履行不能時の価格を通常損害として賠償請求ができるとするのが一貫的だと潮見は主張する。

債権者の賠償額減額事由として、債権者に過失があった場合の418条の過失相殺、また損害と同時に利益も受けた場合の損益相殺がある。

金銭債務の不履行には、履行不能が存在しないこと、また不可抗力を含め一切の免責がないこと、損害の発生に因果関係の証明が不要であることがあげられる。

債務には給付義務のほかに付随義務として誠実行動義務、債権者の保有する生命・身体・健康・所有権などの利益(完全性利益)の保護義務、目的達成のために必要な措置を講じる義務(登記移転協力義務、複雑な機械の操作説明義務など)がある。

生命または身体に対する損害については、安全配慮義務違反(債務の付随義務)と不法行為のどちらでも損害賠償請求が可能だが、加害者の過失/不履行の帰責事由立証責任は債務不履行の場合債務者が、不法行為の場合被害者が負うため債務不履行のほうが容易(ただし安全配慮義務は手段債務)。ただし親族の慰謝料請求権は不法行為でしか認められない。改正後の消滅時効はどちらも「知ってから5年」「権利が行使できる時から20年」になった(ただし債務不履行の5年/20年は生命身体の侵害の特例で、通常は権利行使可能から10年)。

並列プログラミング

Makefileを書いてmakeした上で、富士通のバッチジョブ管理システムに対してbashファイルとして書かれたジョブを登録することでリソースグループや実行時間制限などを指定する仕組みだった。Makefileを見る限りIntelMPIラッパーを通してmpiicc、Intelコンパイラを使っているようだ。

法医学

イギリス連邦諸国はコロナー制度があることが多いが、スコットランド大陸法系であり存在していない。

コロナー制度では司法官たるCoronerが死因を決定するが、Medical examiner制度では法医学者が決定する。

今回は制度の歴史を辿る。

紀元前のアレクサンドリアでは既に解剖学が発達していた。またローマではC. Caesarの検視が行われたとの記録もある。14世紀初めに北イタリアで初の法医解剖が行われたとされる。また神聖ローマ帝国のカロリナ刑事法典では剖検を含めた医師の助言の必要性が示されており、刑事司法への関与中心に発達してきた。警察・検察が法医学的調査を研究所に委託する形である。現在では北欧中心に発展している。

大陸系の警察は明らかな自然死以外はすべて研究所に送る(日本では解剖の要否も警察が判断してしまう)。

英米系の制度は発展が遅く、労働関連死の増えた産業革命期に復権し、医師が連続殺人を行っていたShipman事件を契機に改正が行われた。

独自の発展を遂げた豪ヴィクトリア州では全死体ベースの解剖率は7.6%。身元不明、精神病院での監護、刑務所での拘禁中の死は必ず検証の対象となる。

アメリカのMedical Examiner制度ではMEが刑事捜査から独立しつつ連携して調査を行う。コロナー制度も人口割合で4割ほどの地域で地方を中心に残っている。

日本では警察が関連する死亡(刑事施設内死亡、警察による交通事故など)は検察が検視することになっている。

新法(調査法)解剖によって、警察の検視・検案で事件性なしとみなされても大学の法医学教室で解剖できるようになった。承諾解剖はほとんど新法に置き換わったという。

ネットワーク論

前回の補足としてCSMA/CDの衝突検知は電圧変化によって行っている。検知するとジャム信号を送ってそれを伝える。全二重通信が主流となった今では多くない。無線LANではCSMA/CA(Collision Avoidance, 通信開始前にランダム時間待つ)が使用されている。

インターネット上で通信を行う上での統一的なルールがInternet Protocol=L3(ネットワーク層)のプロトコルIPアドレスは世界で一意。130.69.251.128/25の25とはネットワーク部の長さであり、先頭から25個ビットが立ったサブネットマスク(11111111 11111111 11111111 10000000 = 255.255.255.128)であらわされる。130.69.251.128から255が同一ネットワークとして解釈される。うちネットワークアドレス130.69.251.128(ホスト部がすべて0)とブロードキャストアドレス130.69.251.255(ホスト部がすべて1)は使用できない。

サブネットマスクはAND演算の範囲を示すものである。すなわち203.178.142.193/27と203.178.142.225/27が同一ネットワークか判定する場合、それぞれのIPアドレスを2進数に変換してサブネットマスクとの論理積を取ったもの=所属するネットワークアドレスが同じかどうかで判断する(直感的には32bit中先頭27bitが共通しているかによって判断する。省略のため24bit分までは共通だと分かったとして、193は11000001、225は11100001であり、残りの先頭3bitが一致するかを見ると一致していない)。今回の場合同一ネットワークにはないため、宛先のIPアドレスが示されていてもMACアドレスARPによって知ることはできない。これが/26であった場合は11が共通しているため同一ネットワーク上にあり、送り先のMACアドレスを返してもらうことができる。

サブネットを分割することで、分割されたネットワークの内部宛ての通信は外部に出なくなり、セグメントごとのポリシーも設定できる。サブネットの分割はどこでもできるわけではなく、/(32-k)においてn*(2^k)のところでしかできない。

IPv6ではネットワーク部64bit、ホスト部64bit固定であり、ネットワーク部の最後のnibble(:で囲まれた4桁)を変えることで分割することがCisco Learning Networkでは推奨されている。すなわち2001:200:1000::/48というネットワークが利用可能な場合、2001:200:1000:0000から2001:200:1000:ffffが含まれる。そこで2001:200:1000:1を教室A用に、2001:200:1000:2を教室B用に、と振っていくと、ホスト部は64bitあるので、接続するホスト数を考えずとも自明に十分であるし、サブネットも2^16あるので通常は十分な内部ネットワーク分割を確保できる。

L2機器はリピータ・スイッチ・ハブなどと呼ばれる。L3スイッチとは、違うネットワークをつなぐもの=ルータのことであるが、なぜL2のはずのスイッチという名を冠しているのか?昔ルータはルーティングテーブルをCPUが処理していたところ、高速なハードウェア実装が出てきたときに「旧来のルータとは違う、新しいもの」という印象を与えるためのマーケティングとして名前が生み出されたのが理由。

ルータは宛先を見てどこに送るか決めるが、通信の秘密に反しているのではないか?という考えが生じるかもしれない。しかし日本法では、ルータの性質からして通信のために必要であり、宛先しか見ないことから正当業務行為だと解釈される。なお通信の秘密は全世界的に重要視されているわけではない。